メンタル マネジメント
2016-05-12

#21いつまでも上達していくための考え方

21ー1 ゴルフの上達にエネルギーを集中させる覚悟

「今からでもシングルになれる」と星野プロは勇気づける。では、そうした目標を見定めたものが、考えるべきこととはなにか。スポーツ心理学の研究から導かれた「スポーツでの成功への方法論」を前回に引き続き、紹介していく。

星野プロ 前回はゴルフで例えば「シングルになる」という目標を持ったならば、それを達成するためのマインドをいかに作るかというお話をいただきました。今回はそのテーマに少し視点を変えて切り込んでみたいと思います。

 私は、現在プロを目指すジュニアの指導にも携わっています。先日、面白い本と出会いましたので御紹介させていただきます。「天才! 成功する人々の法則:講談社」の著者マルコム・グラッドウエルは、どんな才能や技量でも10000時間の練習を続ければ“本物”になると述べています。どんな才能や技量でも…というところは、やや言い過ぎかな?と思いますが、「ゴルフでも芸術でも一流」なるためにはそのくらいの鍛錬が必要だと妙に納得させられました。

 10000時間ということは、週20時間練習するとしても、ほぼ10年かかるということです。もし、ジュニアゴルファーで、将来そうなりたいと思うのなら、今すぐにそれを意識しながら取り組み始めたほうがいい。スタートが遅れれば遅れたぶんだけ、ゴールも遅くなる。それが遅くなれば、様々な事情で続けられなくなることもありますから、可能性がなくなる、という話をよくするんです。

佐藤教授 私もより上のレベルを目指すアスリートたちとの面談の中で「成功と犠牲は、表裏一体である。一度に多くの分野にエネルギーを分散して消費しても、目標とした成果は上げられない」という話をします。

 しかしそうすると「1つの分野だけの、○○バカにならないか」と心配される方がいるかもしれません。でも、学習の転移という概念なのですが、1つのことを極めると、他の分野のことも理解できるようになるということがあるのです。いわゆる基本となる「軸」が大切だということです。例えば、言語でも同じで英語を極めるとフランス語もスペイン語もドイツ語も学習しやすくなるのと似ています。

星野プロ ゴルフ以外のことからゴルフで活かせる考え方を引き出すこともできますからね。逆に、ゴルフで学んだことを実社会の中でいかせたりもします。一生懸命やったことは決してムダにはなりませんよね。

21ー2 モチベーションを持ち続ける努力

星野プロ もちろん、一般の社会人ゴルファーに、10000時間を費やせと言っても不可能に近い。でもそれと同じような覚悟をもって取り組めば、「世界に手が届く」は無理でも、「シングル」ならば手が届きます。しかし、そのスタート時期が遅れれば遅れるほど……というのは同じですね。

 ただ、そうした覚悟を決めたとしても、それを続けるエネルギーを燃やし続けることはまた別の大変さがある気がします。

佐藤教授 そうです。それについては「持続的な進歩を意識しよう」とアドバイスしますね。今日の自分が昨日の自分より、ほんの少しでも進歩しているという実感が持てるように。漫然とトレーニングをするのではなく、それを得ようとする意識をもって取り組むことが大切だと思います。

星野プロ ゴルフで言うと、スコアがよくなることで「進歩した」という手応えは得られますが、それを持続的に得られるかと言うと、ちょっと疑問があります。「いい球が打てるようになった、スイングが良くなってきた」ということについても、自分の感覚だけでは進歩を実感しづらいものです。そういうときに役に立つのが、映像や各種測定器によるデータという客観的事実だと思います。

 映像で見れば理想的なハンドファーストでインパクトできているのかそうでないのか。トラックマンなどの測定器を使えば、インパクト効率、入射角、軌道の向き、フェースの向きなどが明確で、わずかな変化でも見てとれます。

 また、そうしたものを見ながら、「同じデータ、同じ映像」を見ながらコーチとゴルファーが修正部分について認識を共有することは、ゴルフの指導の効果を高めていくには重要だと思いますね。「持続的に進歩している」という実感を持ってもらいやすいとも思います。

佐藤教授 進歩の度合いを、感覚で「うまくいった」「うまくいかなかった」だけでなく、変化を「見える化」することは本当に大事なんです。データはその1つのいい方法ですね。

21ー3 自分の中に起きている変化を意識する

星野プロ 以前、上達についても、右肩上がりばかりではなく、「上達の度合いが小さいかほとんど感じられない」時期がある(プラトー)というお話をいただきました。ゴルフの場合、数値で見ると、進歩もあればプラトーももちろんありますし、実際に後退していることもあります。

 でも、後退したとしても、「自分が実際に出した事実」ですから、良かったときの数字をまた取り戻すことができると考えてもらいやすいと思います。

佐藤教授 いずれにしても、こうした「変化」を意識すること、意識しようとすることは、大切なことだと思いますね。

星野プロ そうですよね。前回の自分よりどう変わったか。でもそうしたミクロな変化だけでなく、マクロと言いますか、10000時間のお話でいえば、「じゃあ、今自分はゴールまでの道のりのどのくらいまで来ているのだ」ということを意識してみるのもいいと思いますね。

 トラックマンの測定値について言えば、アメリカのプロツアーでとられたトッププロたちの数値が公表されていますから、これらを理想値、あるいは目標値として、そこに自分の現状がどのくらい離れているのか、近づいてきたのかを見るというのも、モチベーションの持続において効果があると思います。

佐藤教授 1つ補足しておきますと、運動学習理論で「レミニッセンス現象」と呼ばれていることがあります。練習して身につけようとしているときに変化が出ない、つまりどうしても意図どおりに動きを変えられないことがありますが、それでも、時間がたってからその変化が出るということが起きる場合があるのです。

 カラダの中での運動のプログラミングが、実際に動いているときにはすぐには切り変わらなくても、一晩寝るなど時間がたってから、プログラミングが定着するのです。

星野プロ 一生懸命がんばっても、今日はいい球が打てなかった、というときは、それがあることを信じ、がっかりしすぎずに家に帰りましょう、ということですね。

メンタルマネジメント講師

星野豪史(ほしの・ごうし)
法政大学経営学部経営学科卒業(1997年3月)
1994年渡米、帰国後はJGTOツアー、JGTOチャレンジツアー、ASIAN PGA TOURに参戦、2002年より
54GOLF CLINIC代表、2010年よりキッズゴルフ株式会社エグゼクティブディレクター として活躍中。2011年より東洋英和女学院大学体育会ゴルフ部コーチに就任。

佐藤雅幸(さとう・まさゆき)
82年日本体育大学大学院体育学科研究科修士課程修了。専修大学教授(スポーツ心理学)、同大学スポーツ研究所顧問。同大学女子テニス部の監督を務め、92年は王座優勝を果たした。現在は同女子テニス部統括。1994には、長期在外研究員としてカロリンスカ研究所(スウェーデン)に留学した。
松岡修造氏が主宰する「修造チャレンジ」におけるメンタルサポートの責任者としてとして活躍中。


星野プロと佐藤教授の取り組み

星野プロと佐藤教授が出会ったのは2011年の6月。松岡修造氏のテニスジュニアアスリートキャンプである『修造チャレンジ』の場だった。星野プロが2010年に設立したキッズゴルフ(株)、54GOLF CLINICにジュニアゴルファーが増加していたため、ジュニアへの指導を勉強させて欲しいと松岡修造氏にお願いをした。そして、その『修造チャレンジ』で選手へのメンタルトレーニングを担当していたのが佐藤教授だった。メンタルトレーニングの重要性を認識した星野プロが佐藤教授に声をかけ、2013年よりジュニアアスリートゴルファー(小学4年~高校3年)向けにメンタルトレーニングを取り入れた『54GOLF K2 CAMP』と実施している。
【取り組みの様子はこちら】
54GOLF K2 CAMP 2013
54GOLF K2 CAMP 2014

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